「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が解除され、コロナ禍でも営業再開や通常営業に戻す飲食店が多くなってきました。それに伴い客足も少しずつ増加し、コロナ禍前に戻ってきているように見えます。

飲食店を開業するには良いタイミングのようにも思えますが、客足が戻らずに苦戦している店舗もまだまだ多くあるのが現状です。

そこで当記事では、飲食店の現状と初期費用を抑えたおすすめの出店の仕方をご案内します。コロナ禍前から飲食店を開業しようと検討していた方や、このタイミングで開業の決断をした方は、ぜひご一読ください。

飲食店の夏休み明けの来店者数は増加の予想

まず、テーブルチェックが調査した「コロナ禍における飲食店の来店・予約件数推移(2022年8月23日更新)」を見てみましょう。

2022年の夏休みは通常のお盆休みに加えて土日や祝日があったり、有給を使うと6〜11連休になったりする人もいたことから、飲食店の来店者数は増加しました。

夏休み明けの来店者数は約5%とわずかな減少となっていることから、今後の客足に期待が持てるでしょう。今後、第7波が過ぎれば、飲食店の来店者数は緩やかに増加すると予想されています。

出典:【週次更新】コロナ禍における飲食店の来店・予約件数推移(2022年8月23日更新)テーブルチェック調べ

未だに厳しい状況の飲食店

これまで飲食店は、新型コロナウイルスの感染状況や「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」による自粛対応に影響を受けていました。しかし、コロナ禍での生活に人々が慣れてきた現在、感染拡大が原因で飲食店の来店者数が減少することは減りつつあります。

前述の調査によると、2022年の来店者数はコロナ禍では過去最高の数値となっていますが、コロナ前の2019年8月と比較すると4割減前後の水準しかありません。

このことから、飲食店の来店者数が緩やかに増加すると予想されても、人々の生活様式が変わってしまったため、コロナ前と同じような来店者数に戻るのは難しいと考えられます。

そのため、テイクアウトや通販など、店内飲食以外の収益源を確保する対応が必要となるでしょう。

ここまで、飲食店における現状を解説しました。続いて、飲食店の出退店状況について、不動産の観点から見ていきましょう。

飲食業は契約満了前に中途解約し撤退する傾向にある

ザイマックス不動産総合研究所の「商業店舗の出退店に関する実態調査 2022(退店編)」によると、コロナ禍以降の飲食店における賃借店舗の状況は以下の通りです。

「契約期間満了前に中途解約し、退店した」と回答した事業者は全体では31%。全業種のうち、68%が飲食業で最も高かった。

飲食業が退店に至った理由として、以下のことが挙げられます。

  • 「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」などの休業・時短要請が断続的にあった
  • 飲食店にとって利益率の高い酒類の提供が禁止された
  • 「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」で休業や時短営業をしたことによる機会損失、さらに利益率の高い酒類の提供が禁止されたことにより、業績が悪化したとがうかがえます。先の見えない長期的な業績悪化や赤字の拡大を防ぐために、契約満了前に途中解約し、撤退の措置を選択する事業者が多くなっているのです。

    ここで退店だけではなく、出店するときのケースも見ておきましょう。出店するときは、契約期間が長めに設定される傾向があります。

    賃借店舗の初回契約期間は長めの傾向にある

    ザイマックス不動産総合研究の「商業店舗の出退店に関する実態調査 2022(出店編)」によると、賃借店舗の初回契約期間は以下の通りです。

  • 「ショッピングセンター」や「駅・商業・飲食ビル」では「5~8年」が約半数
  • ロードサイド単独店と言われる、車が多く走る大通り沿いにある独立型の店舗では「17~20年」や「20年超」の契約が多くなる
  • 飲食店の場合、賃借店舗の契約期間は2年・3年・5年など、立地によってさまざまです。しかし、それ以上の年数で初回契約をするケースもあり、出店の際には慎重に検討する必要があります。

    たとえばショッピングセンターでは、不動産の開発業者が施設価値の維持や向上を目的にリニューアルを実施するため、5〜6年での契約が一般的です。ロードサイド単独店は、長期的に安定した賃料を確保したい貸主が多いため、長期年数での契約となる傾向があります。

    飲食店の新規出店は初期投資額が大きく、投資回転率・回収期間を重視する事業者が多いです。投資した費用を回収できないまま中途解約する事態にならないよう、初回契約の段階から綿密な計画が求められます。

    飲食店を新規出店するには柔軟な契約形態が必要

    これから飲食店を出店する場合は、柔軟な契約形態が必要です。

    コロナ禍のように外部環境による退店リスクが大きい場合、中途解約ができ、なおかつペナルティができるだけ少なくなるように契約内容を協議することが重要です。

    また、貸主側には、これまでの慣行や仕組みではなく、より柔軟な対応が求められるようになるでしょう。ロシア・ウクライナ情勢や物価上昇、円安の進行など、変化の大きい社会情勢の中で「中途解約ができない」「解約ができても制約が多すぎる」といった条件だと、なかなか契約してもらえない恐れがあります。

    そうなると、貸主側は借り手のいない状態が長期化し、得られるはずだった利益が減る可能性があります。出店側の飲食店事業者も、良い物件に出会えても契約内容との折り合いが付かず、出店のチャンスを見送ることになるかもしれません。

    今後は新規出店の契約形態・期間などに関して、貸主側・出店側の双方が、これからの時代にあった形を模索していく必要があります。

    初期費用を抑えるなら居抜き物件がおすすめ

    飲食店を新規出店する際にネックになるのが高額な初期費用。初期投資した分は長期でないと回収が難しいため、店舗物件の契約期間中に中途解約する事態は避けたいところです。

    しかし、希望条件で契約できる物件は、なかなか見つからないかもしれません。良い物件かつ希望条件で契約できるところを探し続けていると、いつまでも物件の検討をしているだけで出店までの期間が延びてしまいます。

    そこで、できるだけ飲食店出店時の初期費用を抑えた契約をするには、居抜き物件の活用がおすすめです。居抜きとは、前のテナントの設備や什器備品、家具などを残したまま、売買や貸し借りすることを指します。

    初期費用を抑えたうえで店舗物件の契約ができれば、仮に外部要因によって経営が難しくなった場合でも、リスクを最小限に抑えられます。

    居抜き物件をおすすめする理由は以下の通りです。

  • 初期費用が抑えられる
  • 早く出店できる
  • それぞれの理由について見ていきましょう。

    居抜き物件なら初期費用が抑えられる

    改装工事費を占める割合は基本設備が大きいため、居抜きで基本設備が似ている物件を見つけるのが得策です。

    代表的な基本設備は以下の5つです。

  • 電気設備
  • ガス設備
  • 給排水設備
  • 空調設備
  • 排気・吸気・換気設備
  • 業態や希望する内装などが同じ居抜き物件を選べば、ほとんど改装工事をすることなく、そのまま利用することも可能です。さらには、契約内容によっては家具や備品を利用できることもあります。

    居抜き物件なら早く出店できる

    居抜き物件なら前テナントが残した基本設備を利用するため、改装工事も少なくなります。工事期間を短くできるため、早く出店が可能です。

    早く出店することにより、かかった初期費用の回収も早く始められます。早期の初期費用回収は、投資回転率・回収期間を重視する飲食業では重要です。

    なお、居抜き物件をおすすめするな理由については、以下の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

    居抜きで開業するときのメリット(飲食店編)

    条件の合う居抜き物件を見つけるポイント

    希望条件に合う飲食店の居抜き物件を見つけるなら、同業態だった店舗がおすすめです。同業態の居抜き物件の場合、店舗の条件が似ていることが多くなります。

  • 基本設備が似ている
  • 店舗の規模が同じ
  • 店舗のコンセプトが似ている
  • 条件の合う居抜き物件の探し方については、以下の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

    居抜き物件で飲食店を開きたい!業種別の探し方と注意点まとめ

    異業種の居抜き物件で初期費用を抑える5つのポイント

    居抜き物件探しに困った時は「退去ナビ」がおすすめ

    「居抜き物件を探したいけれど、探し方がわからない」「契約に不安がある」といった方には「退去ナビ」がおすすめ。退去ナビは、3,000社以上の会員数を誇る、居抜き物件のマッチングプラットフォームです。

    飲食店を退去したい事業者と入居したい事業者をマッチングし、条件に合う物件を紹介します。契約交渉に不安がある場合は、専門知識を持ったプロが交渉や契約のサポートをすることも可能です。

    居抜き物件を探す際に費用はかかりません。この機会に退去ナビへ、ぜひご相談ください。

    退去ナビ 公式サイト

    まとめ

    飲食店の出店は初期投資が大きく、長期でないと初期費用の回収は難しいとされています。投資した初期費用の回収が難しくなった場合、赤字の拡大を阻止するために、やむを得ず契約満了前の中途解約を選択し、退店するケースもあります。

    これからは、貸主・借り手の双方で合意したうえで、中途解約してもペナルティが少ないなどの柔軟な契約の締結が重要です。また居抜き物件を活用して、できるだけ初期費用を抑えつつ、早期回収をするなどの対応が事業者に求められます。