通常、居抜き物件を利用する際は、同業種の物件を選びます。なぜなら利用できるものが多く、その分、初期費用を抑えられるからです。

しかし、異業種の居抜き物件を利用したほうが初期費用を抑えられ、早く出店できることもあります。

では、どのようなときに異業種の居抜き物件を検討したほうがいいのでしょうか?当記事では、初期費用を抑えながら異業種の居抜き物件を選ぶポイントをご紹介します。

異業種でも居抜き物件を検討したほうが良い場合

ラーメン店などの飲食店が集まる激戦区は、すぐに契約されてしまい、なかなか良い物件が見つからないことがあります。その場合は、異業種の居抜き物件を選んだほうが選択肢が多くなるので、良い物件が見つかる可能性が高まります。

異業種の居抜き物件を活用している事例は、以下の記事にて紹介しています。あわせてご覧ください。

ガソリンスタンドがラーメン屋に?おもしろ居抜き物件5選

異業種の居抜き物件を選ぶ5つのポイント

異業種の居抜き物件を選ぶにはいくつかのポイントがあり、ポイントを押さえておけば、異業種でも初期費用が抑えられます。

ここでは異業種の居抜き物件を選ぶ5つのポイントを紹介します。

  • 基本設備が似ている
  • 業態が似ている
  • 店舗の規模は同じ
  • 客層の同じような地域を選ぶ
  • 店舗のコンセプトが似ている
  • それぞれ見ていきましょう。

    基本設備が似ている

    居抜き物件は内装が利用できると考えられがちですが、改装工事費の多くは基本設備にかけられます。そのため、基本設備の工事費用を省くことができれば、大きなメリットとなります。

    電気設備
    電気設備とは、変電所から電圧を下げられた電気を建物に運び込み、運び込まれた電気を光や熱、動力に変える設備のことです。

    例えば、

  • 照明
  • コンセント
  • ネットワーク回線
  • 防犯カメラ
  • エアコン
  • IHクッキングヒーター
  • などが電気設備に挙げられます。

    電気を建物に運び込む配電の仕方はいくつかありますが、その中に電灯と動力があります。電灯は一般家庭向けの電化製品で用いられ、動力は業務用の電気機器に用いられます。

    【電灯と動力の違いを比較】

     電灯動力
    電力会社の契約プラン
    単相三線三相三線
    電圧(送電量)低い(小さい)高い(大きい)
    使用できる電気機器一般家庭向けの電化製品業務用の電気機器

    大きな店舗やオフィス、飲食業などが電灯の居抜き物件を選んでしまうと電力が足りません。そのため、業務用の電気機器が使えなくなり、引き込み工事が必要となります。そうなると工事費用が別途かかり、居抜き物件を選ぶメリットが得られません。

    ガス設備
    ガスの種類は、都市ガスとLPガスの2種類があります。

    【ガスの種類】

    都市ガス・メタンなどの天然ガスや液化天然ガス(LNG)が原料
    ・道路の下にあるガス管を通って供給される
    LPガス
    (プロパンガス)
    ・液化石油ガスに冷却や圧力を加えガスを液化したもの(LPG)
    ・LPガスが入ったボンベを業者が配送します。

    居抜き物件を利用する場合、ガス設備で気にしなければならないことはガス容量です。ガス容量は簡単には増やせません。なぜなら、立地や地域の関係で、なかなか工事の許可が下りないことがあるからです。もし、許可が下りたとしても、追加工事の費用がかかってしまいます。

    例えば、飲食店を開業するために事務所などの飲食店以外の居抜き物件を探した場合、ガス容量が足りなくなってしまいます。飲食店でも、カフェと中華料理店では使用するガスの量が違うため、開業する業態に必要なガス容量を把握しなければなりません。

    開業する業態に必要なガス容量は、ガスメーターに繋がっている配管の径によって判断します。

    業態ごとの配管径の目安は以下のとおりです。

    ガスの容量(号数)業態
    4〜6号小料理、寿司、BAR、カフェ
    6〜10号居酒屋、洋食、和食(そば、うどん、天ぷら等)
    10〜16号イタリアン、フレンチ、ラーメン
    16号以上中華料理

    開業する業態のガス容量を割り出し、契約後にガス容量が不足することのないようにしましょう。

    給排水設備
    給排水設備とは、給水設備と排水設備の総称です。

    【給水設備と排水設備の違いを比較】

     給水設備排水設備
    説明水を水道管から建物に引き入れ、供給する設備使用したや汚水を流すための設備
    該当設備給湯設備、貯水タンク、給水タンク、給水ポンプ排水管、排水ポンプ、トイレの水洗用設備、浄化槽

    開業する店舗やオフィスの規模、業種によって、給排水設備の規模や配置場所が変わってきます。特に飲食業の場合は重要で、営業に必要な給水設備の規模が小さいと、水を十分に供給できません。

    空調設備
    空調設備は「空気調和設備」を略した呼び方です。空調には人が対象の「保健用空調」と物が対象の「産業用空調」に分けられます。

    【保健用空調と産業用空調の違いを比較】

     保健用空調産業用空調
    対象
    目的建物にいる人が、温度・湿度の調整、換気、気流の調整などで、快適で健康的に過ごせる環境を作る製品の品質管理や品質維持、パソコンなど精密機器の機能維持
    対象施設オフィス、ホテル、病院、博物館、美術館、デパート、など工場、クリーンルーム、農園芸施設、貯蔵庫、など

    開業する店舗やオフィスの規模と空調設備の規模が合っていないと、十分に空調管理や維持ができません。維持できないと、建物内の人が不快な思いをしたり製品や精密機器の品質が落ちたりする恐れもあります。

    排気・吸気・換気設備
    室内の汚れた空気を排出し、新鮮な空気を取り入れる設備が必要です。これらの設備を換気設備と呼び、基本的に建物での設置が義務付けられています。

    居室を有する建築物は、その居室内において政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。

    引用:建築基準法第28条の2

    換気には窓を開ける方法と、換気扇やダクトなどの換気設備を使用して空気を入れ換える方法があります。

    窓を開けて換気する方法だけだと換気容量に限度があり、天候や気温、臭いや音など周辺環境に左右されるので、換気設備が必要です。開業する店舗やオフィスの規模より換気設備の規模が小さいと、後から増設することになります。

    しかし、換気設備は建物に合わせて設計されています。換気設備を増設すると、外の空気を取り入れることになるので、室内が暑くなったり寒くなったりするほか、雨の日には湿気も取り込んでしまうので注意が必要です。

    業態が似ている

    カフェやバーなどの似ている業態は、設備や備品、店舗内の配置が同じであることがあります。そのまま使える部分が多ければ短期間でのスピード開業も可能です。ただ、そのまま使うことになるので、店の内装や雰囲気にこだわりがある場合は、あまりお勧めできません。

    店舗の規模が同じ

    同じ業種でも規模が違うと基本設備の容量が足りません。容量が足りない場合は増設することになりますが、壁や床などの工事も必要になるケースがあるので、その分、費用がかさんでしまいます。同業種で同じ規模の物件が見つからない場合、同じ規模の異業種から探すと希望の物件がすんなりと見つかることがあります。

    客層が同じような地域を選ぶ

    同じ業種でも客層によって立地条件が違います。そのため、同じ業種だからといって開業する店舗とターゲットがズレた地域に出店しても、思うようにお客様が来ることはないでしょう。そうすると営業が苦しくなり、潰れてしまう恐れもあります。一方、異業種でも客層が同じ地域であれば、集客アップも期待できます。

    店のコンセプトが似ている

    同じ業種でも店のコンセプトが違うと内装や備品も異なります。店のコンセプトが似ていれば、内装や備品をそのまま引き継げるので、初期費用を抑えた開業が可能です。ただ、基本設備や店の規模、立地条件に比べると優先度は低くなります。

    異業種の居抜き物件を探すなら「退去ナビ」へ

    異業種の居抜き物件を探すには「何が利用できるか?」「どこにお金をかけなければいけないのか?」を判断しなくてはならないため、ある程度、改装工事の知識が必要になります。さらに、判断するポイントと実際の物件と照らし合わせなければいけません。

    開業までに時間もなく判断に不安がある場合は、居抜き物件の仲介サイト「退去ナビ」の利用がお勧めです。退去ナビなら、希望条件に合う居抜き物件を探すだけではなく、専門知識を持ったプロが相談に乗ったりサポートしたりすることも可能です。

    居抜き物件を探す際に費用はかかりません。交渉や契約が心配な場合は、気軽に「退去ナビ」へご相談ください。

    退去ナビ 公式サイト