飲食店として物件に入居する際、どのような業態の飲食店なのかによって、入居できる・できないが決まります。焼肉店や焼き鳥店をはじめとする「重飲食」と言われる飲食店は、物件によって入居できないことがあるのです。
では、どこが基準になって重飲食と判断され、物件への入居可否が分かれるのでしょうか。
この記事では、重飲食と軽飲食の違いや、重飲食が物件に入居できない理由と対策、契約時のポイントについて解説します。これから飲食店を始めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
重飲食と軽飲食の違いは調理時の差で判断
重飲食と軽飲食の違いは、調理時に多くの火や油を使うかどうかで判断します。なぜなら、店舗に必要な基本設備が違ってくるからです。
ここでは、以下のポイントを踏まえて重飲食と軽飲食の違いを解説します。
重飲食は調理の際に多くの油や火を使う
重飲食とは、調理の際に多くの油や火を使う飲食業のことです。
代表的な重飲食の一例は以下のとおりです。
においや煙が出やすいため、大型で高機能なダクトなどの排気・排煙設備が必要です。また、店舗に適切な量・圧力で水を供給したり、衛生的に排水したりする給排水設備を設置しなければいけません。
物件によっては、大型の排気・排煙設備や高機能な給排水設備を必要としない飲食店も、重飲食として扱われることがあります。詳しくは後述しますので、あわせてご覧ください。
軽飲食は調理の際に多くの油や火を使わない
軽飲食は、調理の際に多くの油や火を使わない飲食業のことです。重飲食と比べて、においや煙が出にくいため、家庭で使うレベルの排気・排煙設備や給排水設備、調理器具で営業できます。
軽飲食の一例は以下のとおりです。
ただ、軽飲食向けの物件は、使用できる電気容量が少ないです。大型冷蔵庫や製氷機、エアコンなど必要最低限の設備を設置するだけで、電気容量がいっぱいになることがあります。
そのため、軽飲食向けの物件で業務用の大型設備を設置する場合は、貸主に相談するようにしましょう。
カフェでも自家焙煎のカフェは重飲食になることもある
カフェでも、自家焙煎カフェの場合は重飲食になる可能性があります。これには、焙煎に必要な焙煎機が関係しています。
焙煎機でコーヒー豆を煎るときには、においや多くの煙が出ます。そのため、ダクトなどの排気・排煙施設と、十分に電力供給できる電源が必要となり、重飲食扱いになる場合があるのです。
自家焙煎のカフェとして重飲食不可の物件に入居したい場合は、においや煙を軽減できるオール電化型の全自動焙煎機を導入する方法もあります。においや煙の問題が解消できれば、貸主から出店の許可が出るかもしれません。
重飲食は、さまざまな理由で貸主から入居許可が出ないことがあります。とはいえ、場合によって許可されるケースもあるので、まずは貸主に相談することが大切です。
では、なぜ重飲食は物件に入居できないケースがあるのでしょうか。3つの理由に分けて解説します。
重飲食が物件に入居できない3つの理由
重飲食が物件に入居できない理由は次の3つです。
それぞれ見ていきましょう。
貸主が近隣への影響を懸念しているため
調理中にダクトから大量のにおいや煙が店外に排出されるため、場合によっては近隣店舗・住民からクレームが出る恐れがあります。
例えば、同じフロアや上層階に入っている別のテナント、住民とトラブルになる可能性があるでしょう。また、建物の位置や風の方向によって、においや煙が離れた場所まで届いてしまうこともあります。
貸主としては、なるべくトラブルを発生させたくないため、重飲食に入居を許可しないのです。
物件自体の仕様や基本設備が十分ではないため
重飲食として出店するには、大型の排気・排煙設備や高機能な給排水設備のほか、ガスと電気についても十分な容量を確保しなければなりません。
希望の物件に入居したくても基本設備が必要な基準に達していないと、店内がにおいや煙で充満したり、排水が間に合わず水漏れを起こしたりする恐れがあります。また、ガスや電気容量が足りないために十分な調理ができないなどのトラブルも起きてしまうでしょう。
このようなトラブルを防ぐ理由で、貸主は重飲食に入居を許可しないことがあります。
軽飲食に比べて建物躯体への負荷が大きくなるため
入居したい物件が、重飲食に必要な設備基準を満たしていない場合は、追加の工事をすることになります。
しかし、建物躯体に穴を開けたり大型設備を設置したりすると、建物そのものに負荷がかかってしまいます。
貸主は建物躯体への負荷を防ぎたいため、軽飲食の入居は許可しても重飲食では許可しないということが起こるのです。
ここまでお伝えした3つの理由によって、貸主は重飲食の入居を許可しないことが多くあります。だからといって、早々に諦める必要はありません。希望の物件が重飲食不可だったとしても、入居が許可される可能性もあります。
重飲食不可であっても交渉次第で入居できる可能性がある
重飲食の入居を不可にしている貸主が多いのは、前述のとおり明確な理由があります。そのため、貸主が感じている不安を解決できれば、入居できる可能性が高まるでしょう。
例えば、においと煙の対策として、ダクトを屋根まで伸ばして設置・排出すれば、近隣のテナントや住民に届きづらくなります。
ダクトを屋根まで設置できないときや油への対策もしたい場合は、特殊な素材を使用したフィルターの導入で軽減させることが可能です。
大型コンロやフライヤーなどで多くの火を使う場合は、設備周辺の壁や天井が燃えないように、仕上げ材を貼るなどの対応が必要になるでしょう。
さまざまな対策によって貸主の不安が解消できる場合に、入居できる可能性があります。気になる物件があれば、重飲食不可でも貸主に交渉してみるといいでしょう。
交渉の際には、以前に重飲食の店舗が入居していた事例があるか確認してみてください。前例があれば交渉しやすくなります。
続いて、重飲食の店舗を契約する際に必要なポイントを解説します。
重飲食で物件契約する際に必要な3つのポイント
重飲食で入居する際には、以下のポイントが必要です。
参考にしながら物件を探していきましょう。
物件契約前に業態を明確に伝える
物件契約前に、出店する業態を明確に伝えることは非常に重要です。業態を明確に伝えないと、開業後にトラブルになる恐れが出てきます。
例えば、貸主が重飲食の入居を許可していなかった場合に、業態を明確に伝えないまま契約・開業してしまうと契約違反となる可能性があります。このような場合、貸主から賃貸借契約を解除されてしまい、借主にとって大きな損害となるでしょう。
貸主が重飲食の入居を許可していても、物件の基本設備工事や改修などが必要な場合には、契約前に伝えなければいけません。工事が必要になることを伝えずに物件契約をすると、「そんな話は聞いていない」と言われてしまいます。
このように、物件契約前に業態を明確に伝えることは、開業後のトラブルを防ぐために非常に重要です。貸主と事前に相談し、行き違いのないコミュニケーションを取っていきましょう。
必要な基本設備や調理機器などをリストにする
適切な物件を契約するには、必要な基本設備や調理機器を把握しておく必要があります。把握漏れを防ぐには、店舗に必要な設備を事前にリストとして書き出しておくのがおすすめです。
大型のコンロやオーブン、フライヤーなどの調理機器を設置する場合は、ガス管の規格サイズを確認しましょう。業務用冷蔵庫や冷凍庫などを設置する場合は、適正な電気容量になっているか把握する必要があります。
リストとして書き出すことで、確認漏れやサイズ・容量の違いに気付きやすくなるのです。
また、火力の強い調理機器を使用する場合、排気・排煙設備や空調設備が適切なものになっているか確認できます。追加の防火対策が必要になるかといったことも把握しておけるでしょう。
基本設備が提供メニューに合っているか検討する
基本設備が提供するメニューに合っているか検討します。開業したあとに「思っていた以上に電気・ガス・水道の使用量が多かった」ということがあるからです。
このようなことが起こると、基本設備を改修する工事が必要になります。工事には期間や費用がかかるため、大きな経済的負担になるでしょう。最悪の場合、場所などの問題で必要な工事ができず、設備が不足したままになる恐れもあります。
契約前には、提供するメニューを踏まえて基本設備が合っているのか確認することが重要です。
重飲食の居抜き物件を探すのもおすすめ
重飲食の入居を許可しない物件もあるため、なかなか希望条件に合うところが見つからないことがあります。このようなときには、居抜き物件の活用もおすすめです。
居抜き物件は、前テナントの事業者が内装や設備などをそのままにして退去した物件のことです。
元のテナントと同じ業態なら営業許可が出ていた事例があるため、入居できる確率が高まります。業態や基本設備の規模が同じ、もしくは似ている場合は、開業時の設備投資も最小限で済むのでコストが抑えられます。
居抜き物件を利用して店舗を選ぶなら「退去ナビ」がおすすめ。退去ナビは、3,000社以上の会員数を誇る、居抜き物件のマッチングプラットフォームです。
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