賃貸オフィスを契約すると、さまざまなトラブルが出てくることがあります。その中で盲点となるのが、エアコンのトラブルです。思っていた以上にエアコンのトラブルが起きて対応に追われるかもしれません。

エアコンが故障すると修理代もかかる上に、使う機会が増える夏季や冬季は予約が取りづらく、なかなか修理できないことがあります。エアコンが使えない環境で仕事をするのは、作業効率にも支障が出てくるので、なんとかしたいところです。

この記事では、賃貸オフィスのエアコンについて賃貸契約前に注意しておきたい事項を取り上げています。契約後のトラブルに遭わないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸オフィスのエアコンは家主、借主どちらのもの?

賃貸オフィスに設置されているエアコンが故障してしまい、業者に修理やクリーニングを依頼する場合は、誰が費用を負担するのでしょうか?

エアコンには、家主が所有している「設備」と、前の入居者が残した「残置物」があります。業者に依頼するクリーニングや修理料金は、「設備」なのか「残置物」なのかによって誰が負担するのか変わってきます。

  • 設備:物件を借りる前から、もともと備え付けられているもの
  • 残置物:前の入居者が置いていったもの
  • ここでは、エアコンが設備だった場合と残置物だった場合に分けて、どちらが費用を負担しなければならないのかご紹介します。

    エアコンが設備の場合は家主負担

    設備の場合、エアコンは家主が所有するため、クリーニングや修理の費用は家主負担です。これは「改正民法606条第1項」において、賃貸物件の使用および、収益に必要な修繕やクリーニングは家主負担になると定められています。

    ただし、借主の故意・過失などで修理やクリーニングが必要になった場合は、借主が費用を負担することになります。

    改正民法606条第1項(賃貸人による修繕等)
    修繕の義務 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

    引用:民法第606条 – 賃貸人による修繕等

    ところが、現実にはエアコンクリーニングの負担は、契約する家主によって違う場合があるので気をつけなくてはいけません。

    例えば、入居して間もない場合のエアコンクリーニングは、前の借主が退去したあとにクリーニングをしていない、もしくはクリーニングしても汚れが落ちていないと考えられ、家主が費用を負担することになります。

    しかし、入居後1年以上になると、借主がエアコンの手入れを怠ったためにクリーニングが必要になると考えられ、費用負担は借主の負担となります。

    エアコンの費用負担に関しては、契約前に下記の2点を確認するといいでしょう。

  • エアコンクリーニングの費用は誰が負担するのか?
  • エアコンの製造年や正常に作動するか?
  • エアコンの製造年や動作を確認するのは、意図しないクリーニングや入居後の早期故障の原因になる恐れがあるからです。

    契約前にエアコンの古さや故障に気付いた場合は、新しいエアコンに買い換えてもらうなどの交渉をするといいでしょう。エアコンを新しく買い換えるときは家主負担です。

    また、エアコンクリーニングや修理の依頼は家主が行います。借主が家主に断りもなく業者に依頼するとトラブルの元になるので、必ず相談するようにしましょう。

    エアコンが残置物の場合は借主負担

    前の借主が残した残置物は、どのような状態のものでも次の借主が入ってきた時点で家主の所有物となります。

    しかし、全て家主の負担だと大きく不利になってしまうため、特別に以下の契約が認められています。

    契約前の重要事項説明で、残置物にあたる設備においては、借主の責任とすることを説明し、借主が承認すれば、その物の修繕義務は借主となる。

    引用:賃貸事務所の残置物は誰のもの?

    つまり、エアコンの修繕義務が借主になるのは通常のことではなく、特約として認められるものなのです。

    ただし、契約書や重要事項説明書に残置物の修理についての記載がなく、付属設備として記載されている場合、クリーニングや修理の費用は家主負担となります。

    ここで重要なのは、賃貸契約する際、残置物としてエアコンが残っていることや修理・クリーニング時の費用負担について説明(重要事項説明)があったのか、契約書や重要事項説明書に記載されていたかという点です。

    契約したあとに「説明をうっかり聞き逃していた」「契約書や重要事項説明書を確認していなかった」ということがないようにしましょう。

    賃貸オフィスに設置されているエアコンのお手入れは誰が費用負担するの?

    エアコンの修理やクリーニングを業者に依頼する場合の費用負担は、契約書などいろいろな条件によって違ってきます。では、日頃のお手入れは誰が費用負担するのでしょうか?

    日頃のお手入れは、設備・残置物共に借主負担となります。これは、借主が家主に対して「善管注意義務」を負うためです。善管注意義務とは物件を借りる際、設備を慎重に注意を払って使用・管理する義務のことを指します。

    善管注意義務違反の一例は以下の通りです。

  • エアコンの手入れを怠ったため故障した
  • エアコンの手入れを怠ったため、水漏れが起こって壁や床に侵食した
  • エアコンを乱雑に扱ったため故障した
  • これらの修理は全て借主負担となります。「設備」「残置物」を問わず丁寧に取り扱いましょう。

    まず、契約書をよく読むことが大切

    基本的に「設備」は家主が、「残置物」は借主が費用負担をしますが、契約書に記載されている内容が優先となります。賃貸契約が成立したら、契約書の内容に了承したことになるので、知らなかったでは済みません。

    契約書の文面は長くて難しい部分もありますが、理解せずに契約するとトラブルの元になります。面倒がらずに契約書をよく読み、疑問点があれば理解するまで確認することが大切です。

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    契約書は読み慣れない単語が多く、読んでも細かなところまで気がつかなかったり、不動産業者や家主に内容を質問しづらかったりすることもあるでしょう。

    さらに、備え付けのエアコンが古い場合、契約前に新しいエアコンに交換してもらうよう交渉する場面もあります。

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    賃貸オフィスのエアコンは契約前の確認が重要です

    エアコンには家主が所有している「設備」と前の入居者が残した「残置物」があり、修理やエアコンクリーニングの費用負担はさまざまな状況によって異なります。

    しかし、契約書に記載されている内容が優先です。賃貸オフィスの契約前には、以下の事項を確認してみましょう。

  • 契約書や重要事項説明書に残置物の修理についての記載があるか
  • 修理についての記載がある場合、どのような内容なのか
  • エアコンは「設備」「残置物」のどちらになるのか
  • エアコンの製造年はいつで、作動期間はどれくらいか
  • エアコンクリーニングを業者に依頼した場合、誰が費用を負担するのか
  • 疑問に感じたことは全て明確にして、少しでも入居後のエアコントラブルを避けるようにしましょう。