テナントや住居として物件を借りる場合には、賃貸借契約を結びますが、賃貸契約にも二通りの種類があるのはご存知でしょうか。

賃貸借契約には一般的に賃貸借契約を結ぶ「普通建物賃貸借契約」の他に「定期建物賃貸借契約」があります。

この違いを知らないと、せっかく契約を結んでも期限を迎えたら退去しなければいけないなど、トラブルの元になる恐れも。そのため、しっかりと理解しておくことが重要です。

今回は、定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いや、定期建物賃貸借契約を結んだ場合の流れとポイントをご紹介します。

定期建物賃貸借契約でも、自社の状況に合った内容ならコストを抑えた出店ができるので、ぜひ参考にしてみてください。

定期建物賃貸借契約と普通賃貸建物借契約の違いは更新のなし・ありです

定期建物賃貸借契約(以下、定期借家契約)と普通建物賃貸借契約(以下、普通借家契約)の大きな特徴は契約の更新がないか、あるかになります。

普通借家契約は借りている物件の契約満了時期が来たら、更新手続きをして更新料などを払えば、原則としてそのまま使用できます。しかし、定期借家契約だと契約期間の満了と同時に契約が終了し、更新はできません。

この他にも、さまざまな違いがあるので、詳しく見ていきましょう。

▼定期借家契約と普通借家契約の比較表

定期借家契約
契約方法書面の契約のみ
更新の有無更新はない
借主からの途中解約特約や事情により解約ができる
普通借家契約
契約方法書面でも口頭のみでも可
更新の有無貸主に更新を拒否する正当な理由がなければ更新できる
借主からの途中解約途中解約の特約があった場合は、特約に従う

定期借家契約

定期借家契約は、借りている物件の契約満了時期が来たら更新はありません。長期間、借主が見つからないリスクを防ぐために、他のテナントの賃料相場よりも安くなっているケースがあるため、コストを抑えた契約ができます。

そして、周辺環境や立地のいい物件が見つかる場合が多いのも特徴です。

定期借家契約は書面で交わさなくてはなりませんが、必ずしも公正証書で作成する必要はありません。

貸主は契約書などとは別に、「この賃貸借契約は更新がなく、期間満了により終了する」旨を書面で発行し、説明も行ないます。

期間満了により終了するため更新できませんが、再契約の打診は可能です。

また、借主からの途中解約は、以下の場合に有効となります。

  • 借主が転勤や療養親族の介護などで契約している物件の使用が困難になり、解約の申し入れがあった場合
  • 途中解約の特約があった場合
  • 普通借家契約

    普通借家契約は、借りている物件の契約満了時期が来たら更新手続きをして、更新料などを払えば原則としてそのまま使用できます。

    普通借家契約の契約方法は書面でも口頭でも成立しますが、口頭のみだとトラブルの元になるので、書面での契約をすると安心です。

    契約更新は借主が希望すれば、正当な理由がない限り、貸主の都合で拒否できません。

    正当な理由の判断は、どのように行うのでしょうか。以下の4つで正当かどうかを判断します。

    1. 貸主、転借人を含む借主の双方が、物件の使用が必要な事情の比較
    2. 該当する物件の現状や使用している状況
    3. 物件の賃貸借に関する、これまでの経緯
    4. 貸主が、借主に対して立退料を支払うと申し出た場合の申告

    借主からの途中解約は、途中解約に関する特約があった場合、それに従います。

    定期借家契約がどのような契約か解説しました。では、定期借家契約を結んでから期間満了まで、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

    次の章で、定期借家契約を結んでから期間満了までの流れとポイントを解説します。

    定期借家契約は契約を結んだら終わりではありません

    定期借家契約は更新がないため、契約を結んだら期間満了まで何もしなくて良いわけではありません。

    定期借家契約は以下の流れで進むので、ポイントをしっかり抑えて、期間満了までの準備をしましょう。

    契約を結ぶ

    定期借家契約を結ぶ際、貸主から借主に契約書とは別に「この賃貸借契約は更新がなく、期間満了により終了する」という趣旨の書面が発行されます。

    なぜなら、事前説明をしないと「契約を更新しない」という定めが認められず、普通借家契約とみなされるためです。

    また「この賃貸借契約は更新がなく、期間満了により終了する」という趣旨の書面について、口頭または電話、オンラインで説明があります。

    宅地建物取引業者が仲介している場合には、貸主の代わりに事前説明が可能です。
    宅地建物取引業者が重要事項説明書に事前説明を記載し、契約における重要事項と事前の説明を同時に行います。

    【ポイント】

  • 契約書とは別に「この賃貸借契約は更新がなく、期間満了により終了する」という趣旨の書面と説明があるか確認する
  • 契約内容で疑問点があれば質問し、わからないまま契約しないようにする
  • 契約期間中

    定期借家契約を結び、契約期間が1か月以上ある場合、貸主から借主に期間満了により賃貸借契約が終わる旨の通知がされます。

    事前の通知があるのは、通知から契約満了までの間に、次の物件を探す期間を設けるためです。契約期間満了の通知は「満了する1年前から半年前」と借地借家法第38条3項で定められています。

    (定期建物賃貸借)
    第三十八条
    期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
    前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
    第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

    引用:「借地借家法(平成三年法律第九十号)」(e-GOV法令検索)

    定期借家契約では、特約がなくても借主から解約できる場合があります。それは、借主が転勤や療養親族の介護などのやむを得ない事情で、契約している物件を使用し続けることが難しくなり、途中解約の申し入れをした場合です。

    これには条件があり、契約している物件の床面積が200㎡未満の居住用建物で、かつ本拠として生活している場合です。テナント兼住居として使用している場合にも当てはまります。

    例えば、建物の一部をテナントとして借りていたり、2階を住居とするなど、この建物を中心に生活していたりする場合は、借主からやむを得ない事情での途中解約の申し入れが可能です。

    【ポイント】

  • 期間満了の通知がきたら、次の物件を探すなどの準備を始める
  • 途中解約の特約は結んでいるか?結んでいる場合、どのような内容になっているか?
  • 期間満了

    基本的に契約期間が満了になったら退去となります。期間満了前に次に契約する物件を探すほか、以下の費用を準備してスムーズに次へ移れるようにします。

    準備をする費用

  • 次の物件の敷金
  • 次の物件の礼金
  • 次の物件の仲介手数料
  • 次の物件の造作譲渡料(居抜き物件の場合)
  • 引越し費用 など
  • 期間満了になったけれど、引き続き物件を使用したい場合は、再契約をする方法もあります。

    次の章で再契約のポイントをご紹介します。

    定期借家契約を再契約できるかは貸主次第

    定期借家契約の再契約は、改めて契約を結び直すことになります。そのため、新たな契約書とは別に「この賃貸借契約は更新がなく、期間満了により終了する」という趣旨の書面と事前説明が必要になります。

    ここで注意したいのが、「前回の契約と全く同じ契約内容であるとは限らない」ということです。

    これは、定期借家契約も賃料増減額請求権が認められるからです。賃料改定に関する特約が賃貸借契約に定められている場合、賃貸料が前回の契約より高くなるケースがあります。

    また、敷金は最終的な退去時に精算すればいいため、必ずしも再契約時 に行うとは限りません。再契約時に敷金の精算時期について確認しておくと良いでしょう。

    再契約ができるケースもありますが、貸主に再契約の義務はないのが現状です。必ず再契約が認められるとは限らない点にも留意しましょう。

    【ポイント】

  • 再契約をする場合、前回と契約内容が違う場合があるので、よく確認して理解する
  • 貸主に再契約の義務はないので、必ず受け付けてもらえるとは限らない
  • 定期借家契約はプロにお任せするのがおすすめ

    定期借家契約は普通借家契約と違うため、戸惑うことが多いかもしれません。契約書や事前説明に不備があると、普通借家契約になってしまう可能性があるため、借主も記載内容の漏れや不明点がないか確認するといいでしょう。

    しかし、このようなことは定期借家契約の知識が豊富でないと難しく、自分だけだと間違った判断をしてしまう恐れもあります。

    また、次の入居準備など、やらなければいけないことが多い中での契約は大変です。定期借家契約をする際は、不動産のプロに相談・お任せするのがおすすめです。

    退去ナビなら定期借家契約の相談もできて、コストを抑えた出店ができる

    定期借家契約は、通常契約する普通借家契約と違うところが多々あります。定期借家契約の特徴は以下のとおりです。

  • 物件の契約満了時期が来たら更新はしないため、コストを抑えた契約ができる
  • 契約方法は書面のみになるが、必ずしも公正証書にする必要はない
  • 契約書などとは別に、「更新がなく、期間の満了により終了する」と書面で 発行され、説明も行われる
  • 再契約ができるケースはあるけれども、契約内容が前の契約と違う場合がある
  • 再契約が可能かは貸主の判断となる
  • 専門知識が必要な定期借家契約は、不動産のプロに相談・お任せすると、その分、時間に余裕ができます。

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