居抜き物件では、賃貸契約とは別に造作譲渡契約を結ぶことがあります。造作譲渡契約とは一体、どのような契約なのでしょうか。
造作譲渡とは、居抜き物件の契約の際、内装や設備など内部を構成しているものや設備賃貸契約に含まれないものを譲渡することを指します。この造作譲渡の内容を明確にし、責任の所在がどこにあるのかを決めたものが造作譲渡契約です。
この記事では、造作譲渡契約に含まれるものや造作譲渡料、トラブルを避けるポイントなどをご紹介します。
目次
造作譲渡契約の相手は賃貸契約とは違います
造作譲渡契約と賃貸契約とは、全く違う契約です。そのため、契約を締結する相手も違ってきます。
造作譲渡契約の相手は賃貸契約とは違い、すべてが物件の貸主とは限りません。物件によって前の借主と新しい借主の間で契約を交わしたり、前の借主・新しい借主・貸主の三者で契約したりするケースもあります。
造作譲渡料の支払いは新しい借り手側です。誰を相手にした造作譲渡契約でも、貸主への相談・報告が必要になります。
ここで注意しなければならないのがリース品です。リース品は前の借主が契約しているため、そのまま造作譲渡してしまうとトラブルの元になるので注意しなければいけません。
リース品があった場合の対応は後の章に記載しているので、あわせてご覧ください。次の項目では、何が造作譲渡料に含まれるのか解説します。
造作譲渡料には何が含まれるのか?
造作譲渡料とは造作譲渡のために相手に支払う費用を指し、何の設備や備品を造作譲渡の項目にするのかは前の借主が決めます。造作譲渡料は詳細が記載されていることが少なく「厨房設備一式」などと表記されている場合は、必ず何が含まれているか確認が必要です。
では「基本的に造作譲渡に含まれている物」と「物件によって造作譲渡に含まれる物」についてご紹介します。
基本的に造作譲渡に含まれている物
一般的に造作譲渡に含まれるのは以下のとおりです。
主に物件内の設備が中心です。ただし、これらは必ずしも前の借主から引き継げるとは限りません。
契約する際には、必要な設備が含まれているのかどうかの確認が必須です。
物件によって造作譲渡に含まれる物
物件によって造作譲渡に含まれる
物件によって、家主が一部所有している
物件内のテーブルや椅子、食器類などの細かい物品も譲渡できる場合は、そのすべてなのか、一部なのかを明確にしておきましょう。
続いて気になるのが造作譲渡契約をするときの金額です。一体、造作譲渡料はどのくらいかかるのでしょうか。
造作譲渡料は、はっきりとした金額が決まっていません
造作譲渡料の相場は、明確に決められていません。目安にはなりますが、以下を参考にしてみてください。
もちろん、これよりも造作譲渡料が安い場合も高い場合もあります。実際のところ、造作譲渡料は前の借主が決めるため、これと言ってはっきりした金額がありません。
前の借主が造作譲渡料を決める基準としては、契約する物件または造作譲渡を含んだ物件に、どれだけ需要や価値があるかになります。
例えば、
といった場合に造作譲渡料が高くなります。反対に、人気のない場所や譲渡される設備の利用価値が低い、厨房設備の規模が小さいと造作譲渡料は安くなります。
また、前の借主が早く引き渡しをしたいときも安くなることがあります。前の借主や貸主が早く引き渡したいときには、値引き交渉するもの出費を抑える手段の一つです。
造作譲渡料の交渉は交渉次第で値引きされます
造作譲渡料は無料になったり、交渉で値引きされたりすることがあります。どのような物件だと有利な交渉ができるのでしょうか?
例えば、以下のような物件を目安に交渉するとよいでしょう。
このような場合、元の借主や貸主は早く次に契約してくれる人を見つけたいと思っているのです。しかし、なかなか新しい借主が決まらないことも。そうなると造作譲渡料を無料や値引きしてでも、契約を進めたい場合があります。
もし、このような物件に出会えた場合は、通常かかるはずだった数百万円の造作譲渡料が抑えられるため、低コストでの新規出店が可能です。
ただし、値引き交渉ができそうな居抜き物件でも、造作譲渡料が安くできるとは限りません。人気エリアの物件で無理な交渉をすると、別の希望者と契約される可能性もあるので、状況を見つつ臨機応変の交渉が必要です。
なお、造作譲渡をする際に気を付けておきたいのが、契約前後でのトラブル。回避するポイントを次の項目で解説します。
造作譲渡でトラブルを避けるための5つのポイント
造作譲渡契約をするときには、さまざまな確認が必要です。しかし、大変だからと言って確認せずに契約してしまうと、後からトラブルが起こるおそれがあります。
ここでは、トラブルに遭わないための5つのポイントをご紹介します。
造作譲渡契約を結ぶ前に、以下で紹介する事項を確認し、契約書などに残しておきましょう。
造作譲渡契約の前には貸主の了承を得る
造作譲渡契約は、貸主に無断で進めることができません。必ず了承を得てから造作譲渡契約を結び、契約書に貸主の了承を得ていることが記載されているかを確認します。
リース品があるか確認する
リース品は前の借主とリース会社との契約になっているため、造作物譲渡に含めてしまうとトラブルの元になります。リース品がある場合は、どれがリース品なのかを明確にし、どのように扱うのか決めていきます。
リース品の扱いは、主に以下の3つとなります。
リース契約を引き継ぐ場合には、前の借主と同じ契約で引き継げるかは、リース会社次第になります。また、リース契約を引き継ぐことはリース残債を払っていくことになり、事業を開始した後のランニングコストの増加につながるため注意が必要です。リース残債がいくらかを確認しておかないと、思った以上に負担がかかるおそれがあります。
設備などの譲渡物に不具合がないか確認する
引き継いだ設備を使い始めるときになって、故障していたと気付くことがあります。
このようなトラブルにならないよう、設備に不具合がないか契約前に必ず確認をしましょう。できるなら動作確認もしておくと安心です。さらに、使用年数や保証書の有無も確認するとよいでしょう。
契約後に不具合があった場合は、誰が責任を負うのかを明確にするのも大切です。
原状回復の負担はどちらがするのか、範囲はどこまでか確認する
賃貸契約書に原状回復義務の有無や範囲が明記されているか確認します。前の借主が破損させた譲渡物がある場合、契約前にどちらが修繕費を負担にするのか明確にする必要があります。
なぜなら、原状回復義務の有無や範囲、前の借主が破損させた譲渡物について明記されていない場合は、新しい借主の負担になるからです。基本的に退去の際は、原状回復をして物件内に何もないスケルトン状態に戻す必要があります。前の借主が破損させたものであっても、元通りにしなくてはなりません。
退去時の原状回復の負担や範囲を明確にしておかないと、思っていた以上の出費がかかる可能性があります。
譲渡物の内容と詳細を明確にする
譲渡物の内容が細かな備品にまで及ぶことがあるため、リストなどの書面で出してもらい確認する必要があります。万が一、譲渡物の中にいらない物や壊れて使えない物が含まれていると、修理・処分費用がかかってしまうからです。
お互いに確認をして決めたことは口約束ではなく、すべて書面に残しておきます。
造作譲渡契約を結ぶ前に確認は重要です
造作譲渡契約だけでなく、契約は契約書に書かれていることがすべてとなります。そのため、契約前に造作譲渡の詳細を把握し、疑問点は明確にしておくことが必要です。
契約前の確認を怠り、決めたことを契約書に残さないと、トラブルの元になるおそれがあります。
とはいえ、契約の内容が難しく、「どう対処したらいいのかわからない」と悩む方もいるでしょう。造作譲渡契約に自信がない場合は、居抜き物件を仲介するプロに相談するものおすすめです。
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造作譲渡契約は賃貸契約とは別の契約で、契約相手も貸借契約の相手とは違ってきます。
以下のことに気をつけて、造作譲渡契約を結びましょう。
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