こんにちは、今回は、店舗の退去・撤退によくあるトラブル事例についてご紹介します。
目次
「店舗退去」は「住宅退去」より揉めがち?!
一般的に、賃貸契約にまつわる問題で多いのは圧倒的に、「退去・撤退」に関してのトラブルです。
一般的に借りていた物件を退去する時は、「借りた物を借りた時の状態で返す義務」、いわゆる「原状回復義務」があります。
ただし、「店舗」や「事務所」用の事業で借りた場合と人が住む場合の「住宅」用で借りた場合は、事情が違います。
「住宅」については、行政によって、東京都の原状回復ガイドライン等に沿って経年劣化や自然損耗に関しては貸主負担で原状回復することが定着しつつあります。
しかし、「店舗」や「事務所」の事業用の物件では、原状回復義務は基本的には全て借主が負担することが一般的のようです。つまり「店舗」、「事務所」に関しては、スケルトン(内装や設備が何もない状態)で貸し出し、スケルトンで返す、という形態が一般的になっています。
契約の際、どうしても「住宅」と同じ感覚で賃貸契約するケースが多く、「店舗」、「事務所」を入居する際の事業用の契約締結は、退去のことをあまり考えずに、契約内容をあまり確認しないで締結してしまい、残念ながらいざ撤退する場合に貸主と揉めてしまうケースは、よく耳にします。
大きな企業であれば、契約書のチェックがしっかりしていることが多いですが、個人事業主で、これから新たに事業用の賃貸契約する際は、より注意が必要です。
(事業を辞めたいのに、退去が出来ず、辞められない店舗がありますがどうしたら良いですか?!という相談を、実際に多数受けています。)
店舗退去時のトラブル事例
①解約通知を出すのを忘れていた
★店舗の退去する日を決めて、色々と準備しているなか、解約通知を出し忘れてしまいましたというケース。この場合、退去した後も家賃はかかってしまうのでしょうか?
→原則的には契約書の約条に則り、解約予告期間内の賃料支払い義務が生じます。
解約に関しては当然、各々の契約によって異なりますが、店舗の退去報告は通常、6カ月前までに解約通知をしなければならないケースが多いようです。中には、3ヶ月前までに通知というケースもあるようです。よって各々の契約によって解約通知を出すべき期間は、契約書に記載されている場合がほとんどなので、契約内容の確認が必要です。
どうして、解約通知を出す期間が決まっているかというと、貸主側の立場となって考えた時、直前に解約を通知されても、次の入居者確保に向けて準備をしなければならないので、未入居期間(家賃の入ってこない期間)が伸びて損害が大きくなってしまう場合があります。よって、契約内容に基づいた、事前告知が必須となるのです。
つまり、解約通知を怠ってしまった場合は、解約予告期間内の賃料支払い義務をなくすことや、支払い金額を少なくするには、管理会社や大家さんへお願いしてみる他、方法は無いようです。契約は大家さんと入居者との合意に基づくものということを考えると、事情を説明して大家さんが納得してくれれば良いですが、やはり契約に基づいた解約通知書を貸主側へ提出することがトラブルを防ぐ手立てになります。
②敷金が返却されない
★店舗退去に際し、敷金が返還されないだけでなく修理費用として高額な料金を請求されたというケース。
→不動産会社や大家に預け金として支払った敷金が返ってこないというトラブルは、借主側つまり退去店舗側が、どのように対処したいかによって、対処方法が変わってきます。
先ずは、敷金返還請求の相談窓口へ相談
・国民生活センター (トラブル内容を聞いてほしい)
・日本賃貸住宅管理協会 (アドバイスが欲しい)
・法テラス (法的措置による解決方法を相談したい)
・弁護士 (裁判や少額訴訟で訴えたい)
→敷金返還請求に向けてのステップ
退去店舗側の対処の方針が定まり次第、敷金返還請求の流れは以下の通りになります。
ステップ1
・現状回復費用の見積もり書を確認
(貸主側で用意された工事会社が原状回復工事を行った場合、どのような工事を行ったのかを、確認し、見積もりや内訳の説明を求めることできますし、不当に工事金額が高い場合があるため、その工事金額や内容の妥当性をチェックします。)
ステップ2
・契約内容と修繕箇所を照らし合わせる
(行われた工事が、契約内容に記載されている範囲内で工事されているか否かをチェックします。稀に、契約内容範囲以外の箇所も修繕箇所とみなされ工事代金が高くなっているケースがあります。)※このあと、原状回復の線引きでのトラブルでもう少し詳しく、説明します。
ステップ3-1
・貸主と敷金返還の協議し和解していく
(現状回復費用の見積もり書の確認を行い、契約内容と修繕箇所を照らし合わせ、その内容を基に貸主側と協議しながら、敷金返還に向けて和解していくことになります。しかし知識や経験がないと、とてもタフな協議になる場合もあります。)
ステップ3-2
・少額訴訟を起こし和解する
(相手が協議に対応しない場合は、法的な対処を行って敷金の返還を請求することも可能です。仮に、60万円以下の金銭の支払請求があった場合は、日本の民事訴訟において、60万円以下の少額訴訟という制度を利用することが可能です。この制度を利用して、退去店舗側が自分で手続きを行える様になっているので、訴訟費用を抑え、迅速に審理を求める和解していく対処の方法もあります。)
ステップ3-3
・通常訴訟に移行し判決をうける
(敷金返還されず、60万円以上の高額な支払い請求があった場合、弁護士を通じて、通常訴訟を行い判決をうける方法もありますが、着手金や報酬金、その他の必要経費が発生する場合があり、想像以上にお金がかかる場合があります。)
敷金返還トラブルは、いざ退去を考えた時に、頭を悩ませる問題です。どのように解決させたいかによって相談先や対処の方法が変わってきますので、本記事によって、自分にあったより良い相談先を見つける参考になればと思います。
そもそも、「敷金」とは?
不動産の賃貸契約でよく請求される、保証金の一種です。アパートのような居住用の物件でおなじみですが、店舗の賃貸においてもよく発生します。
敷金の目的は主に、賃貸契約中にその物件の何らかのダメージを負わせてしまった場合に備えるためです。著しい破損や汚損が発生した場合は修繕費等が必要となりますが、敷金はそれを補填するためにあるのです。
敷金は法律上、停止条件付返還債務を伴うものと定義されています。つまり入居者が解約する際に返金されるのが原則です。しかし室内等に限度を超えたダメージが見つかれば、敷金から補填されることになるため、減額されてしまいます。
ただし、経年劣化のような貸主側の落ち度で生じたダメージではない場合は、敷金から補填することは認められていません。この補填の基準はある時期まで、貸主側にとって有利に運用されていました。敷金を返却しない不動産業者がいることが何度も問題視されたため、このように民法が改正される結果となりました。
③原状回復の線引きのトラブル
★日差しが原因で、壁面が色落ちしている、タバコのヤニで、壁面にシミがついてしまったケース。この場合は貸主、借主どちらが負担?!
→「通常消耗」と「過失・故意」の線引きが争点になります。この「通常消耗(貸主が負担する)」、「故意・過失(借主が負担する)」のきっちりと区別するのは、とても難しくトラブルが多いのも事実です。 また、国土交通省のガイドラインによると、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされています。
上記の例ですと、太陽光が原因で、壁面が色落ちして補修工事をする場合は、「通常消耗」と区別されて貸主負担となり、タバコのヤニで、壁面にシミがついて壁面をクーリング工事をする場合は、「故意・過失」と区別されて借主負担が一般的なケースなります。
★借主負担の一般的な例
・喫煙によるヤニ汚れ
・床面に飲み物をこぼしたことによるシミ・カビ
・移動作業で生じたひっかきキズ
・フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
・調理場、ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ
・トイレ・洗面台の水垢、カビ等
→ただし、冒頭でもお伝えした通り、「住宅」、「店舗」・「事務所」それぞれにおける原状回復の線引きが違うようです。
◆事業用の「店舗」「事務所」は、100パーセント義務が発生
事業用の「店舗」、「事務所」の賃貸契約において、原状回復は100%借主ノ義務になるのが一般的で、現状回復に関して、契約に記載している場合がほとんどです。よって、その契約内容に記載されている内容に沿い、どれだけ綺麗に使用していたとしても原状回復を行う必要があります。原状回復の内容は、契約内容の記載どおりで、原状回復工事を行う中での線引きは、「壁」・「床」・「天井」の塗り直し・張り直し含め、全て綺麗な状態にしなければならない他、契約書に特約事項が入っている場合があるので、特約が記載されている場合は、特に注意が必要です。
事業用の原状回復の義務が100%借主負担になる理由としては、住居の場合、上記に記載したとおり、経年劣化の見通しがつきやすいと言われているためです。しかしながら、借主が「店舗」、「事務所」の場合、その業種によって使用する方法はかなり変わってきますので、貸出し期間中に、どのくらい劣化してしまうのかなどを鑑みて、「通常損耗分」を賃料に組み込むことは難しいという考え方が一般的なのです。
つまり、事業用の場合、壁紙や床材、配線やパーテーションなど事業の業種に合わせて、オフィスの内装を自由にレイアウトすることがほとんど可能ですが、「通常消耗分」の予想が難しく、事業用の物件は自由にレイアウトが可能部分が多いことから、事務用の賃貸契約には、原状回復費用として支払ってもらえるように、原状回復費用の100%負担と契約内容に記載してあり、特約内容を含む「壁」・「床」・「照明」・「配線」など全て元通りにするように記載されているケースもあるので、入居前に原状回復の線引きについて確認し、契約を締結することをおすすめします。
□そもそも、「原状回復」とは、
不動産の賃貸物件でよく発生する言葉です。その物件を解約するとき、入居したときの状態に戻すことを意味します。
新たな貸主がすぐにでも経営をスタートできる状態になっていることは、貸店舗においては重要です。このため契約条件の中に、原状回復が義務づけられていることはごく当たり前です。また借主側は、借りようとしている物件が原状回復されていることを念入りにチェックする必要があるでしょう。
原状回復義務を忠実に果たすとなれば、汚れた部分や壊れた部分は申し分のないレベルに戻さなくてはいけません。紛失した備品等は、同じ品物を探して購入するなどして補充しないといけません。破損が深刻な場合は個人の手では回復できない恐れがありますが、その場合は借主側に連絡して修復に必要な費用を払わないといけません。
原状回復にはどうしても限界があります。それに建物は自然に経年劣化するものです。「どこまでを原状回復の対象とするのか?」その点ははっきりとさせておくのが無難です。また、入居時の状態をよく記録しておくことも大切でしょう。
できれば契約の時点で、原状回復の目安やガイドラインを示してほしいと申し入れたほうが正解でしょう。そこがはっきりすれば、物件の手入れやクリーニングがしやすくなります。
④替えたばかりの備品を新品にしろと言われる
→原状回復の線引きでも記載したとおり、賃貸契約書に原状回復の特約に関して、事業用の「店舗」、「事務所」の原状回復は特約によって細かく定められています。様々な事情から入居してまもなく、きれいな状態で退去しなくてはならない状況もあると思いますが、備品や原状回復にあたる項目に関して基本的には特約に従って、替えたばかりの新品な備品でもあっても、新たなに新品へ変更し原状回復を行わなければならないケースがあります。新品の備品でまだ利用できるのに、とても勿体ない話ですが、よくトラブルに発展するケースの一つです。
★原状回復の特約項目(例)
・間仕切り
・ドアや窓
・壁、天井の塗装
・床の張替え
・電気等の配線
・照明
・飾り棚といった造作
・水回り
賃貸契約書をよく読むこと、理解する事が大事
賃貸契約書がとても重要なことを認識されたと思いますが、入居する際や退去を検討する段階で、契約書の中身をしっかりと確認することが大切です。契約書をよく読まずトラブルに発展するケースは多く、「契約期間は?!」「解約通知前は、何ヶ月前から可能か?!」「敷金の返却に関して?!」「原状回復の範囲と内容は?!」「特約の内容?!」は、特にトラブルに発展する項目です。契約書ってなんだか苦手、面倒だし…。という気持ちは、誰でも感じると思います。今一度、賃貸契約書をよく読んで、理解する事がとても大事です。
トラブル防止のために契約の時にしっかり理解、協議しよう
最近、事業者用の原状回復に関してガイドラインが制定されましたが、貸主・借主の双方でトラブルが多く、貸主と借主の退出時の希望や原状回復の可否や線引に関してお互いにそれぞれの事情があるのも事実です。貸主や仲介業者に言われたことをそのまま聞いてしまうのではなく、色々と自分達で調べ考えて、賃貸契約書を理解した上で、貸主や物件の管理会社へ協議するのも一つの手段です。もちろん、簡単に協議出来る内容ではないと思いますが、貸主や物件の管理会社の中には、きれいに利用されて、替えたばかりの備品であれば、そのまま置いて原状回復なしでも、退去しても問題ないと言ってくれるケースもあるようです。 やむなく退去や撤退を検討する際に、トラブルを回避しながら退去コストを少しでも抑えることができれば幸いです。
〈退去コストを大幅削減〉
・原状回復費用をの削減
・解約ペナルティーの削減
・賃料1ヶ月分をもらえる
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